【2028年問題】価格交渉が不可能に?「適正原価制度」が迫る店舗配送の再構築

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西村 和洋

株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング 
サプライチェーン支援部 
ディレクター エグゼクティブコンサルタント

製造業、小売チェーン店、通販企業などの荷主企業の物流改善(委託先企業選定、物流業務設計)、コストダウン、物流拠点戦略の策定などに従事し、特に、IT(情報システムの戦略、設計、構築など)を得意とする。ロジスティクスのコストダウンと品質アップの実現を、物流フロー改善・業務改善・情報システム改善等の多方面の視点から提案している。​​

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トラック運賃の「買手優位」の時代が、いよいよ終焉を迎えようとしています。
皆様は、2028年に施行が予定されているトラック輸送の「適正原価制度」をご存知でしょうか。
まだ制度の詳細は議論の途中ですが、これは単なる運賃値上げの話にとどまらず、流通業の経営や店舗運営のあり方そのものを根本から揺るがすインパクトを持っています。

1. 「適正原価制度」がもたらす最大の変化

この制度では、「燃料費」「人件費」「減価償却費」「公租公課」といった実際のコスト項目を厳密に反映して「適正原価」を算出することが検討されています。
そして最大のポイントは、この適正原価を下回る運賃・料金での取引(収受)が法的に禁止される点です。
これまで、運賃は物流会社との個別交渉や価格競争によって各社でバラつきがありました。しかし今後は、「同じ距離・同じ条件であれば、どの物流会社を使っても同一の運賃になる」可能性が極めて高くなります。
つまり、「他社より安く運んでくれる会社を探す」という従来のコスト削減手法が、制度的に使えなくなるのです。

2. 運賃を抑える鍵は「生産性の向上」のみ

相見積もりによる値引き交渉という選択肢が消える中、流通企業が物流コストを抑えるためにできることは一つしかありません。それは、「トラック輸送の生産性を極限まで高めること」です。
しかし、現場に目を向けるとどうでしょうか。
これまで流通業の物流は、「店舗の開店時間に合わせた早朝納品」「細かな時間帯指定」など、店舗側の要請を最優先にしてきました。その結果、トラックの積載率が低下したり、荷待ちや空車回送が発生したりと、無数の「非効率」が放置されてきたのが実情です。
同一運賃の時代において、こうした店舗都合の非効率はそのまま「自社のコスト増」として跳ね返ってきます。

3. 物流部門に求められる「社内巻き込み」と「構造改革」

この巨大な変化を乗り越えるため、物流部門には今、二つの大きな役割が求められています。
一つは、店舗運営部門や営業部門への理解促進と協力要請です。
「なぜ今、納品時間枠の緩和や配送回数の見直しが必要なのか」「店舗側の協力が調達コストにどう直結するのか」を論理的に示し、全社課題として店舗オペレーションの変更を進めなければなりません。
もう一つは、配送ネットワークそのものの再構築です。
単に配送ルートを見直すだけでなく、ベンダーからの「調達物流(集荷型物流)」へ切り込んで積載効率を上げることや、「旗艦店から近隣のサテライト店へ供給する」といった拠点配置の見直しなど、抜本的なネットワークの再定義に取り組む必要があります。
制度施行まで残された時間は多くありません。価格交渉に頼らない「真の効率化」へ、今こそ社内とサプライチェーンを巻き込んだ改革をスタートさせましょう。

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