これからの運送業の人事制度-成果主義と結果主義

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三村 信明

株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング
物流ビジネス支援部 グループマネージャー
シニアコンサルタント

1978年生まれ。専門商社、大手経営コンサルティング会社を経て、2011年、船井総合研究所に入社。入社後は、生産財分野(製造業、建築資材メーカー、生産財商社など)、物流会社・運送会社を中心にコンサルティングを手がける。2018年7月より、船井総研ロジ株式会社に異動( 2019年1月転籍)。運送会社・物流会社に特化して、人事制度の構築・運用支援、組織戦略立案を行っている。

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2026年2月10日配信のコラムでは、「トラック適正化二法」で「公正な評価に基づく賃金の支払い」が「法的義務」、「許可更新の要件」になることをお伝えしました 。

今回は、人事評価や報酬決定の基準・考え方として4つの観点(成果主義・結果主義、実力主義、職務主義)を紹介いたします 。それぞれ、評価の「対象」や「プロセスへの配慮」に違いがあり、順に解説いたします 。





人事評価の4つの観点

成果主義

個人の出した成果(利益や達成度)に基づいて評価する制度 。結果だけでなく、そこに至るプロセスや努力も加味される傾向があります 。

結果主義

プロセスを一切考慮せず、最終的な数値や結果のみで評価する考え方 。成果主義よりもドライで、数字がすべてという側面が強くなります 。

実力主義

年齢や経歴に関わらず、本人の持つスキルや能力(実力)を評価 。成果主義と同義で使われることも多いですが、より「個人のポテンシャル」に重きを置くニュアンスが含まれます 。資格の有無、専門知識、リーダーシップなど、「成果を生み出すための力」があるかを評価します 。

職務主義

本人の能力や成果ではなく、「担当している仕事(職務)の価値」に対して報酬を支払う考え方 。欧米で一般的な「ジョブ型」のベースとなる考え方で、「人」ではなく「ポジション」に給与がつきます 。

成果主義と実力主義はどう違うのか?

上記の「成果主義」と「実力主義」は、どちらも年齢や勤続年数(年功序列)に縛られない評価スタイルで混同されやすいですが、「何を評価のゴールにするか」という観点、「評価の対象」に明確な違いがあります 。

項目 ①成果主義 ②結果主義 ③実力主義 職務主義
評価の対象 仕事の成果(目標達成度)+プロセス 最終的な数字・成否 保有(発揮)能力・スキル 仕事の内容・役割
スタンス 期待に応えたか。
日本で広く普及。結果と努力のバランス。
勝てば官軍。
非常に明確だが、プロセスが無視される。
何ができるか。
年功序列の対義語。若手でも実力があれば昇進。
何を任されたか。
「この仕事ならいくら」と決まっている。
重視する点 工夫や努力も一部加味。 過程は一切問わない。 知識・資格・潜在能力。 仕事(役職)そのものの価値。
メリット
  • モチベーション向上:
    評価基準が明確(数字など)で、頑張りが給与に直結するため、優秀な層のやる気が引き出せる。
  • コストの最適化:
    会社として利益が出ていない時に、高い人件費を払い続けるリスクを抑えることができる。
  • 若手の抜擢:
    「社歴」を無視できるため、優秀な若手が早くから活躍・昇進できる。
  • 自己研鑽の促進:
    スキルを上げることが評価に繋がるため、組織全体のスキルの底上げができる。
  • 専門性の向上:
    担当する範囲(職務記述書)が明確で、スペシャリストが育ちやすい。
  • ミスマッチの防止:
    「この仕事ができる人を雇う」ので、入社後のギャップが少ない。
デメリット
・懸念点
  • 短期的な利益追求:
    「今期の数字」さえ良ければいいと考え、長期的な視野での行動・改善・育成が疎かになる。
  • チームワークの低下:
    個人評価を重視しすぎると、他人のサポートを嫌がる風潮が出る。経営者目線ではなく、個人事業主化が進む。
  • 評価の難しさ:
    スキルそのものをどう客観的に測るかが難しい。評価が主観的になりやすく、「実力がある」と判断する基準が曖昧になりがち。
  • 運用を誤ると能力を発揮していなくても保有しているだけで評価が高くなる。
  • 柔軟性の欠如:
    「これは自分の仕事ではない。」といったように、範囲外のトラブルや変化に対応しづらくなる。
  • 配置転換が困難:
    「総合職」のように、あちこちの部署へ異動させて育成することが難しい。
  • 運用を誤ると仕事が同じなら、誰がやっても同じ給料になる。
  • 運や環境に左右される。

自社の人事制度はどれ? 運送業界によくある落とし穴

いかがでしょうか 。給与に占める歩合給の割合が多い運送会社ほど、「当社は成果主義・実力主義だ。」とおっしゃる傾向があるのですが、実は「結果主義」だということがわかります 。

また、未払訴訟を経験した会社は、職務主義で固定給が多く、誰がやっても同じ給料になりがちで、実労働時間で割増賃金を支給している場合は、「給与=労働時間」 。場合によっては、能力の低い社員ほど給与が高くなる傾向があります 。

これからの運送業の人事制度は、月給は実力主義をベースとした職務主義、賞与や一部手当は成果主義になるように設計し、トラック適正化二法や人手不足に対応する必要があります 。

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三村 信明

株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング
物流ビジネス支援部 グループマネージャー
シニアコンサルタント

1978年生まれ。専門商社、大手経営コンサルティング会社を経て、2011年、船井総合研究所に入社。入社後は、生産財分野(製造業、建築資材メーカー、生産財商社など)、物流会社・運送会社を中心にコンサルティングを手がける。2018年7月より、船井総研ロジ株式会社に異動( 2019年1月転籍)。運送会社・物流会社に特化して、人事制度の構築・運用支援、組織戦略立案を行っている。

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